どうやらこれは遊びらしいぞ

【キャッシュレス社会の裏がわかる】「キャッシュレス覇権戦争」 岩田昭男

 

キャッシュレス覇権戦争 (NHK出版新書 574)

 

【本書から抜粋】

取引のすべてが記録されるキャッシュレスでは、個人情報の取り扱いリスクが常に付きまとう。
(中略)
蓄積された個人情報を分析することで、その人の信用度を数値化してランク分けする「信用スコア」ビジネスも始まっている。待ち受けているのは「信用格差社会」だ。

 


こんにちは、ケン・イケハです。

 

スマホ決済に代表される「キャッシュレス化」の動きが、最近になってますます加速しています。

 

私のような地方暮らしの者でさえも、ふだんの買い物では現金を使うことがほとんどなくなりました。

 

その一方で、現金にこだわりのある方は依然として多く、日本の現金利用者の割合は先進国の中でもトップクラスになっているようです。

 

そんなキャッシュレス社会の現状を把握するために、岩田昭男さんの「キャッシュレス覇権戦争」がとても参考になりました。

 

覚えておきたいポイントをまとめましたので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

 

覚えておきたいポイント

なぜ国はキャッシュレス化を進めるのか

日本政府がキャッシュレス化を進めている理由は主に3つあります。

①外国人観光客はキャッシュレス決済が普通なので、インフラを整備してインバウンド消費を拡大させたいから。

 

②年間でみると、現金の製造に約517億円現金の運搬やATMの維持管理に約2兆円ものコストがかかっているので、この現金コストを削減したいから。

 

③お金の流れを把握して、徴税を徹底したいから。

 

ペイペイ祭りの反響と課題

2018年12月におこなわれた、ペイペイの「『100億円あげちゃう』キャンペーン」はお祭り騒ぎとなり、そのおかげで、日本国民にスマホ決済の存在を広く知らしめることになりました。

 

その一方で、「不正利用の発生」「情報に敏感な特定の人ばかり得をする」「中小の個人商店にはまったく恩恵がない」という課題もみえました。

 

キャッシュレスに反対している人の理由

便利でお得なキャッシュレス決済ですが、反対意見も根強くあります。
理由を多い順に並べると次のとおりです。

 

1位:浪費しそうだから

2位:お金の感覚が麻痺しそうだから

3位:お金のありがたみがなくなりそうだから

4位:現金は必要だから

5位:犯罪が多発しそうだから

 

今後特に伸びると考える決済サービス

筆者が特に注目しているのが、アマゾンペイです。


すでにアマゾンユーザーはとても多く、彼らがアマゾンペイを利用するのに、あらためて面倒な手続きがいらないからというのが大きな理由です。

 

もう一つの注目サービスとしては、ペイぺイをあげられています。
現金の壁にはばまれた、全国の小規模商店の開拓に力をいれていることが理由となっています。

 

アメリカではクレジットカードがないと生きられない

アメリカで生まれたクレジットカードは、いまもキャッシュレス決済のメインとなっています。


アメリカでは、クレジットカードの利用記録からなるクレジットヒストリー」がないと、普通に生活することもできません。

ヒストリーがない移住者は、ローンが組めなかったり、引越も思うようにできなかったり、様々なところで差別を受けます。

 

そしてヒストリーがあったとしても、点数による差別があり、スコアが低いとローンの金利が高くなったりします。

 

中国の社会信用システム

中国では、アメリカのクレジットスコアを参考にし、アリペイのジーマ信用(ゴマ信用)が利用されています。

 

これは、経済能力だけでなく、年齢や学歴人脈や趣味関心事などの情報をもとに、人を点数でランク付けする仕組みです。

 

ゴマ信用が低いと、住宅ローンを断られたり、公共料金の支払いが遅れるとすぐに供給をストップされたりと、色々な差別を受けます。

 

中国政府はこのゴマ信用の国家版の社会信用システムをつくり、国民の監視体制を強化しようとする動きがあります。

 

信用スコアビジネスへの相次ぐ参入

日本でもゴマ信用に似たもので、個人の返済能力などをスコア化し、他の企業に販売する事業がおこなわれています。

 

このような信用スコアビジネスには、ソフトバンク、ヤフー、ドコモなど、大量の個人情報をもつ様々な企業が参入しています。

 

GAFAが狙う個人情報

世界トップのIT企業であるGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)では、IT機器やサービスを通して、特に大量の個人情報を収集しています。

 

生活情報のほとんどがこれらの企業に集まる仕組みができているため、私たちは常に監視をされているような状況になっています。

 

データ監視社会で身を守る

キャッシュレス社会は便利な反面個人の情報知らないところで集められ分析されてしまう社会でもあります。

 

一方でまだ構想段階ですが、個人が自分の情報を守る助けになる可能性があるものとして、情報銀行」と呼ばれる管理機関があります。

 

これは、個人情報(購買履歴、家計収支、健康情報など)を一元的に管理し、個人の意向に合わせて、情報を必要とする企業への提供を仲介する機関です。

 

まとめ

スマホ決済などのキャッシュレス化の普及では、ポイント還元などのお得情報がメインに伝わってきていますが、その裏では、知らないうちに個人情報を利用したビジネスが展開されていることもわかりました。

 

気にしなければそれでいいという問題ではなく、アメリカや中国での「信用スコア」の利用のように、企業が収集した個人情報をもとにして、点数の低い人間を差別するというようなことが実際に起こっています。

 

とはいえ、便利なキャッシュレス決済を利用しないのはもったいないので、料金滞納などの悪い情報が企業に蓄積されないように気を付けながら、時代の波にのってうまく使いこなしていこうと思います。

 

キャッシュレス覇権戦争 (NHK出版新書 574)

キャッシュレス覇権戦争 (NHK出版新書 574)