【お金の価値が下がった世界でどう生きる?】「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」佐藤 航陽(著)
【本書から抜粋】
手段の多様化により人々が注力するポイントが「お金」という手段から、その根源である「価値」に変わることは予想できます。
価値を最大化しておけば、色々な方法で好きなタイミングで他の価値と交換できるようになっていきます。
こんにちは、ケン・イケハです。
最近、再び仮想通貨が注目を集めるようになっています。
仮想通貨などの新しいテクノロジーの登場により、お金の役割や社会がどのように変わっていくのかをあらためて考えたいと思い、佐藤航陽さんの「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」を再読しました。
著者は大学在学中にメタップスという会社を起業した実業家で、オンライン決済、データマーケティング等の事業や、「タイムバンク」といった新しい概念の事業の創出などをおこなわれています。
これらの事業を通じて得られた知見をもとに、「お金や経済とは何なのか」「お金の役割はどのように変わるのか」といったテーマで本書は書かれています。
おさえておきたいポイントをまとめましたので、「今後のお金と社会の変化」に興味をお持ちの方の参考になればと思います。
- おさえておきたいポイント
- 未来の方向性を決めるもの
- Fintech2.0とは
- 経済はネットワーク
- 経済システムの5つの要素
- 経済に持続性をもたらす2つの要素
- 経済と脳の関係
- 経済と自然の関係
- 自然がバランスよく成り立っている3つの要因
- 自然の秩序
- 創発的思考
- 分散化が社会を覆す
- シェアリングエコノミー
- トークンエコノミー
- トークン化する世界
- 3種類のトークン
- 自動化・分散化と自律分散
- AIとブロックチェーンを組み合わせたプロジェクト例
- お金の価値
- お金はツールの一つになる
- 資本主義から価値主義へ
- 価値の3分類
- 評価経済に違和感を感じる理由
- ソーシャルキャピタル
- 経済は選ぶことができる
- 人生に意義をもつことも価値となる
- 価値主義の世界のスタンダード
- 「儲かること」より「情熱を傾けられること」
- 熱中できることの見つけ方
- お金は道具にすぎない
- まとめ
おさえておきたいポイント
未来の方向性を決めるもの
・未来の方向性を決める3つのベクトルは、「お金」「感情」「テクノロジー」である。
・この3つのベクトルがそろっていないと、現実ではうまく機能しない。
・たとえば、他人の感情を無視した経済的な拡大はうまくいくことはない。
Fintech2.0とは
・Fintech1.0とは、すでに存在している金融の概念は崩さずに、ITを使ってその業務を限界まで効率化するようなタイプのものである。例として、ロボアドバイザー、スマホ決済、クラウドファンディングなど。
・Fintech2.0とは、これまでの金融の枠組み自体を無視して、全くのゼロベースから再構築するタイプのもの。例として、ビットコインなど。
・本書「お金2.0」は「Fintech2.0」にならっている。
経済はネットワーク
・経済は個人の欲望・欲求を起点に動く報酬(インセンティブ)のネットワークである。
このような動的なネットワークには二つの特徴がある。
①極端な偏り
上位の1%の富裕層が世界の富の半分を所有するように、所得でも消費でも極端な偏りが起こる。
②不安定と不確実性
全体が緊密につながり相互作用することで、遠くの国の出来事が自国の経済に大きな影響を与えるように、経済が不確実で不安定な状態になる。
経済システムの5つの要素
持続的かつ自動的に発展していくような「経済システム」には5つの共通点がある。
①インセンティブ(報酬が明確)
現代は3M(儲けたい・モテたい・認められたい)の3つの欲望が特に強く、これらを満たすシステムは急速に発展しやすい。
②リアルタイム(時間によって変化)
人間は変化が激しい環境では、緊張感を保ちながら熱量が高い状態で活動することができる。
③不確実性(運と実力)
不確実性が全くない世界では、想像力を働かせて積極的に何かに取り組む意欲が失われる。
④ヒエラルキー(秩序の可視化)
実際に広く普及した経済システムは、ヒエラルキーが可視化されている。年収、売上、価格、順位、身分、肩書など。
⑤コミュニケーション(交流の場がある)
参加者同士が交流して互いに助け合ったりする場が存在することで、全体が1つの共同体であると認識できるようになる。
SNSはこれらの5要素を完璧におさえている。
経済に持続性をもたらす2つの要素
①寿命
経済システムそれ自体の寿命をあらかじめ考慮しておくこと。
寿命がきたら別のシステムに参加者が移れるように、選択肢を複数用意しておくことで、安定的な経済システムをつくることができる。
例として、フェイスブックがワッツアップやインスタグラムのサービスも取り入れていること。
②共同幻想
参加者が共同の幻想を抱いている場合、システムの寿命は飛躍的に延びる。組織やサービスであれば、理念や美学みたいなものである。
経済と脳の関係
・経済システムを構成する要素がそのようになっているのは、脳の仕組みに関係している。
・生物は欲望が満たされたときに(三大欲求や他人に褒められたりなど)、脳から快楽物質を分泌する。それにより、生物を色々な行動に駆り立てる。
・脳内の報酬系の仕組みをフル活用した装置が、ゲームである。
経済と自然の関係
・経済のメカニズムと最も似ているのが「自然界」である。弱い者はすぐに淘汰される。
・自然が経済に似ているというよりも、経済が自然に似ていたからこそ、資本主義がここまで広く普及したと考えられる。
自然がバランスよく成り立っている3つの要因
①自発的な秩序の形成
簡単な要素から複雑な秩序が自発的に形成される。例として、水が自然に六角形の結晶になる。
②エネルギーの循環構造
生物は食事などで外部からエネルギーを取り入れ、活動や排せつを通して外部に吐き出す。
③情報による秩序の強化
情報が内部に保存されることで、構成要素が入れ替わっても同じ存在であり続ける。
自然の秩序
・自然の中に社会、社会の中に人間、人間の中に細胞といったよういに、入れ子のような構造になっている。
・自然の構造に近いルールほど社会に普及しやすく、かけ離れた仕組みほど悲劇を生みやすい。
創発的思考
・経済・自然・脳のように、複数の個が相互作用して全体を構成する現象は、「創発」と呼ばれる。
・今後はこのような「創発的思考」ともいえる思考体型が必要になってくる。
分散化が社会を覆す
・これからの10年でお金や経済の世界で最もインパクトのある現象は、「分散化」である。
・既存の経済や社会は「分散化」の真逆の「中央集権化」から成るので、「分散化」は既存のシステムを根本から覆す概念である。
・「分散化」が進んでいくと情報やモノの仲介では価値を発揮できず、独自に価値を発揮する経済システムそのものを作ることができる存在が大きな力をもつ。
・グーグルなどのIT企業は、分散化の中で力をつけていく「個人」をサポートする側に回ることで、自らも力をつけるという戦略をとっている。
シェアリングエコノミー
・シェアリングエコノミービジネスは、分散している状態でネットワーク化した社会での成功例の典型。
・運営者に必要なのは、サービスや商品を提供することではなく、「黒子」として個人をサポートしていくこと。いかに優れた経済システムを設計できるかが全て。
・これまでの「代理人型社会」とこれからの「ネットワーク型社会」のよいところを混ぜたハイブリッド型モデルと言える。
トークンエコノミー
・シェアリングエコノミーをさらに推し進めたのが、トークンエコノミー。この2つは「分散化」という大きな流れの延長線上に存在する。
・トークンとは、仮想通貨やブロックチェーン上で機能する独自の経済圏をこう呼ぶようになったが、正確な定義があるわけではない。
・トークンエコノミーと既存のビジネスモデルの大きな違いは、経済圏がネットワーク内で完結している点である。
特定のネットワーク内で流通する独自の通貨をトークンとして生産者が発行して、完全に独自の経済圏を作り出すことができる。
・大規模なトークンエコノミーの例としては、カナダ発のメッセンジャーアプリ「Kik」が発行する「Kin」が期待されている。
トークン化する世界
・トークンはバーチャル空間上のデータにすぎないが、現実世界の資産と結びつけることで、あらゆるものの価値を可視化することができる。
・例えば、影響力、信用、好意、時間、デジタルコンテンツ、文字などの社会的な概念などである。
3種類のトークン
②配当型トークン
収益の一部をトークン所有者に分配するトークン。
③会員権型トークン
保有している人が特別な割引や優待を受けられるトークン。
最も規模が大きく、最も成功しているトークンエコノミーは、ビットコインである。
自動化・分散化と自律分散
・世の中の膨大なデータにより進んでいく「自動化」と、ネットワーク型社会に移行することで起きる「分散化」という2つの大きな流れは、今後の10年を考えるうえで非常に重要になる。
・この2つが混ざったときに起こる「自律分散」というコンセプトが、多くの産業のビジネスモデルを覆すことになる。
・自律分散とは、「全体を統合する中枢機能をもたず、自律的に行動する各要素の相互作用によって全体として機能する仕組み」と定義されている。典型的な例が、インターネットやビットコインである。
AIとブロックチェーンを組み合わせたプロジェクト例
・「Numeral」はAIとブロックチェーンによって運営される無人のヘッジファンドである。
・協力して成果をあげた匿名のデータサイエンティストに、自動的に発行されるトークンが報酬として分配される。
・中国企業「BingoBox」が完全に無人のコンビニをオープンしている。スマホ、WeChat、IoT、信用スコアなどを組み合わせてサービスを可能にしている。
お金の価値
・いまは金融マネーが滞留し始めており、相対的にお金の価値そのものが下がり続けている。
・逆に、信頼や時間や個性のようなお金では買えないものの価値が、相対的に上がってきている。
お金はツールの一つになる
・ITの発達で紙が記録手段の1つの選択肢になったように、「お金」も価値媒介手段の1つになりつつある。
・価値を保存・交換・測定する手段は、お金である必要はなくなっている。
・人々が注力するポイントが「お金」から「価値」に変わることが予想され、価値を最大化しておけば、色々な方法で好きなときに他の価値と交換できるようになる。
・「価値」とは商品のようなものであり、「お金」とは商品の販売チャネルの1つみたいなものである。
資本主義から価値主義へ
・今後は可視化された「資本」ではなく、お金などの資本に変換される前の「価値」を中心とした世界に変わっていくことが予想できる。
・価値主義では価値を最大化しておくことが最も重要。価値には、実用性のあるものだけでなく、感情や共感・信用などの観念的なものも含まれる。
・お金は価値を変換したものにすぎず、価値を媒介する1つの選択肢にすぎない。
価値の3分類
①有用性としての価値
役に立つかどうかの観点で考えた価値。
②内面的な価値
愛情・共感・興奮・好意・信頼など、個人の内面的な感情に結びついた価値。
③社会的な価値
社会全体の持続性を高めるような価値。
評価経済に違和感を感じる理由
・「評価」「信用」と「注目」「関心」が混同されていることが多い。SNSのアクセス数やフォロワーなど。
・評価経済はメリットも多いが、行きすぎると資本主義と同じように問題は起こりうる。
ソーシャルキャピタル
・ソーシャルキャピタルは、「社会的なネットワーク」を「資産」と捉える考え方。
・これからは、ソーシャルキャピタルを増やすのに長けた人も大きな力をもつようになる。
経済は選ぶことができる
・複数の経済システムは並存し得る。
・何に価値を感じて、どんな資産を蓄え、どんな経済システムの中で生きていくのかも、自分で選んで決められるようになる。
人生に意義をもつことも価値となる
・欲求不満の少ない現在のような満たされた世界では、人生の意義や目的こそが逆に「価値」になりつつある。
・人生の意義や目標を他人に与えられる存在も、価値がどんどん上がっていくことになる。
価値主義の世界のスタンダード
・「好きなことに熱中している人ほどうまくいきやすい」世の中に変わっていく。
・いまの経済の中では産業の構造の変化も乏しいので、若い世代が競争していくのは相当分が悪い。
・資本主義では認識がされにくかった、「内面的な価値」に絞って活動をしていくのが生存戦略の観点からもよい。
「儲かること」より「情熱を傾けられること」
・金銭的なリターンを考えるよりも、何かに熱中している人ほど結果的に利益を得られるようになる。
・他人に伝えられるほどの熱量をもって取り組めることを探すことが、実は最も近道。
・内面的な価値では、独自性や個性が最も重要なので、他の人の背中を追う意味は薄くなる。
熱中できることの見つけ方
・1日中やっていても苦痛ではないことを探す。
・他人から異常に詳しいと言われることなどにもヒントがある。
お金は道具にすぎない
・お金がうまく扱えず困っている人ほど、お金に特別な感情を抱いていることが多い。
・お金や経済を扱うためには、お金と感情を切り離して1つの「現象」として見つめ直すことが近道。
まとめ
とても示唆に富む内容が多くある一方で、なかなかイメージのしづらい点も多くあります。
その理由は、本書で語られている社会は、いまはまだ姿が見え始めたところで、誰も経験をしたことがないからだと思います。
人からの評価や信用をもっている人が、それをお金に変える手段は登場しています。
しかしそれらは、今のところお金を得る手段の一つにすぎず、トークンではなく法定通貨を得ることで成り立っており、基本的に貨幣中心の経済の中で動いています。
では、いまだ実現していない社会を語っても意味がないのかと言えば、そうではありません。
本書の中でアインシュタインの言葉として、「空想や想像力は知識よりも重要」ということが書かれています。
人間はどんな空想も現実に変えることができるということです。
なので
「評価経済や価値主義のような社会になるわけがない」
と考える人は、これまでの常識に従い、これまでとおりのルールでお金を稼ぎ、これまでとおりの生き方をすればよいと思います。
一方で。
「評価経済や価値主義のような社会を見てみたい」
と考える人は、自分の熱中できるものを探し、目先のお金よりも内面的な価値を重視した活動に注力していけばいいと思います。
本書で示されている未来はまだ明確なかたちのあるものではなく、想像力をもって、作り上げていく過程にあるということでしょう。
信用しないでこれまでとおりのルールで生きるか。
あるいは、好奇心をもって、リスクをとりながらも自分の情熱をそそげることに挑戦してみるか。
どちらが正しいという正解はなく、選ぶのは自分です。
周りから無意味だと笑われても、私は後者を選びたいと思います。
ということで、今回の記事は以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お金2.0 新しい経済のルールと生き方 (NewsPicks Book)
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