老後は現役時代よりも支出が増えるの?減るの?【統計データからは見えない注意点】
今回の記事はこのような方に向けた内容です。
・老後は貯蓄がないと生活できないと言われて不安。
・老後は現役時代と比べて、どのくらい支出が増えるのか(減るのか)知りたい。
こんにちは、ケン・イケハです。
先日、「老後は年金だけでは夫婦で2,000万円不足する」という発表を金融庁がおこない、ちょっとしたニュースになりました。
不安に感じた方もいるかもしれませんが、老後シミュレーションは条件しだいで何千万円も金額が変わりますので、あくまでも参考程度にみておいた方がいいでしょう。
将来の年金収入は、自分の力でどうすることもできません。
一方で、老後の支出については、シミュレーションを立てて、ある程度コントロールすることが可能だと思います。
そこで今回は、「現役時代と比べて、老後の支出は具体的にいくら変わるのか」をまとめました。
老後の生活設計をたてるうえで、参考になればと思います。
現役時代と老後の支出比較
では、現役時代と比較して、老後の支出がどう変わるのか見てみましょう。
「総務省統計局の家計調査データ」を利用させていただき、単身世帯を対象とした「35~59歳」と「65歳以上」の月平均支出金額を比較しました。
※総務省統計局「家計調査(2018年)」を参照し独自に作成
データを比較したところ、
「老後は現役時代よりも、月の支出が約30,000円減少する」
という結果になりました。
金額ベースで特に減少が大きいのは「食費」です。
老後は医療費が大きく増加するとよく聞きますが、データ上では現役時代よりもわずか1,300円のアップとなっています。
健康寿命の大切さ
「なんだ老後は支出が減るのか」と安心された方もいるかもしれませんが、このデータ比較には一つ注意点があります。
それは何かというと、「老人ホームへの入居費」などの金額が、65歳以上の支出の中に含まれていないだろうということです。
なぜそう推測しているかというと、単身世帯の人が介護施設に入居したら、その家には人がいなくなるので、調査員の方たちが訪問して調査することができないはずだからです。
なので、調査対象からすっぽり抜けているだろうということです。
介護関連の費用は多様なので、ここでは参考までに一つのデータだけお伝えしますと、「介護付きの有料老人ホームの月の利用料金」は、平均で約25万円(※)となっています。
※【参照】公益社団法人全国有料老人ホーム協会「平成25年度 有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅に関する実態調査研究事業報告書」
file:///C:/Users/kenik/Desktop/report_h25_01.pdf
このことからわかるのは、健康な間であれば、老後は現役時代よりも支出は減少する。
しかし、介護が必要になったり、施設への入居が必要になると、支出が一気に跳ね上がるということです。
先日、金融庁が「老後は年金だけでは夫婦で2,000万円不足する」という発表をおこないましたが、その計算に「総務省統計局の家計調査」を使っているなら、同じように「介護施設等の利用費用が計算に含まれていない」かもしれません。
つまり、平均的な老後の不足金額は、2,000万円よりもっと大きくなる可能性があるということです。
このあたりの検証は、また次の記事あたりでおこなう予定です。
政府はこの2,000万円の数字をもとに資産運用をうながしていますが、それよりも、若いうちから健康への投資をおこない、介護施設の利用頻度を下げる努力をした方が、資産運用よりもよほど貯蓄を残す効果があるように思います。
まとめ
老後は現役時代よりも、介護不要で健康に暮らせる間は、単身世帯の場合で月の支出が約3万円減少するという結果になりました。
一方で、「介護付きの有料老人ホーム」の月の利用料金が平均で約25万円というデータもあり、介護が必要になると、老後の生活費が一気に跳ね上がることが見えてきました。
お金の投資で資産をふやすことも大事ですが、健康への投資で健康寿命を延ばし、介護サービスへの支出を抑えることの方が、お金の面でも大きな成果を得られるかもしれません。
老後不安をあおる情報があふれていますので、冷静に受け止め、あせって内容のわからない高リスクな資産運用に手を出さないように気をつけましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。